その店に気づいたのは,
助手席に座していた連れ合いだった.

「へそのおまんじゅう」だって・・・
何だろね?

近くの店で昼食を済ませ,
旅の最後の土産にと,
へそのおまんじゅうと小さな洋菓子をふたつ,
試しに買ってみた.

「へその,おまんじゅう」なのか,
「へその緒,まんじゅう」なのか,
その疑問はいまだ解けることはないけれど,

これが何とも美味しいお菓子だった.

富良野の町は北海道のへそに位置するそうで,
例年7月の終わりにはへそ祭が行われることでも有名らしい.
ほんとうに慎ましい町なので,
その町がどれぐらいの人で賑わうのかは定かではないけれど.

ちなみに,一緒に買った洋菓子,
ふらのチーズケーキふらの雪どけチーズケーキ

どちらも絶品だった.

数えるほどしか訪れたことはないのだが,
富良野の町そのものが醸し出している,

どこか控えめ慎ましい空気が,

この店とその菓子にも感じられる.

何であれ露出して話題になることばかりを求めるものが多いこの時代のなかで,
姿も技も味も大きさも,

何もかもが遠慮がちに整えられたこの店の菓子は,
口にした瞬間,その美味しさで,
その姿かたちをいい意味で裏切ってくれる.

和菓子のおまんじゅうにも,洋菓子のケーキにも,
つくり手の同じ気持ちがしっかり映し出されているように思えた.

真面目に丁寧につくり続けられてきた町の銘菓の実力.

新鮮な出会いだった.

きっとまた富良野を旅すると思っているけれど,
その時にはぜひ立ち寄ってみたい店ができた.

ちなみに店のホームページを見ると,
お菓子の名前は「へそのおまんぢうだった.

店の名は「SHINYA」という.

全国の物産展にも出展しているらしいので,
近所でも買えるのかもしれないけど,
やっぱり富良野で買うのがいちばんなんだろうな.